大判例

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東京高等裁判所 昭和35年(ツ)40号 判決

上告人が原審において提出した甲第一号証(建物賃貸借公正証書正本)第五条には、「賃借人ハ左ノ場合ニハ本契約ヲ解除セラルルモ異議ナク直ニ賃借物ヲ返還スヘキモノトス。第一、賃料ヲ期日ニ支払ハサルトキ、第二、以下略」という記載のあることが明らかである。原裁判所は、「右文言から直ちに本件契約解除には催告を要しないとは解せられないばかりでなく、むしろ右文言は、単に『解除されても異議はない』というに過ぎず、民法第五四一条の適用を排除し、催告なくして解除しうることを意味するものではないというべきである。」と判断した。しかしながら、民法第五百四十一条の規定により賃貸借が解除せられた場合賃借人はこれに対し異議を述べる権利はないのであるから、もし右条項の趣旨が原判示のような内容を有するに過ぎないものとすれば、それは全く無意義なことを約定したことに帰着するが、当事者が賃貸借契約においてある約定をなし、これを公正証書に記載した場合においては、他に特段の事情の認められない限り、それは法律上なんらかの意義を有する特約であると解するを相当とする。而して前記契約条項を卒直に読めば、それは賃借人が賃料支払を怠つた場合には、賃貸人は催告を要せずして契約を解除することができる旨を定めた趣旨であると認められないこともない。しかるに、原判決は特段の事情の存することについてなんら判示することなく、右文言を以て、原判決のような趣旨に解すべきものであるとなし、上告人のなした本件契約解除の意思表示を無効であると判断したのは、判決に理由を附しない違法があるものといわねばならない。

(奥田 岸上 下関)

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